新選組!!土方歳三 最期の一日
泣けました…。思い起こしてみると、大河本編の最終回は少し消化不良気味に感じていたのだけれど、これでやっと本当に「終わった」実感もあって。史実はどうあれ、土方歳三が近藤勇の後追いで"自爆"したのではないこと、想いが榎本武揚や箱館で生き残った隊士に引き継がれたエンディング、よかったです。
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にしても、オリジナル完パケ、熱烈ファンだったにもかかわらず、続編のみ登場の榎本を演じた片岡愛之助の存在感と台詞回しに圧倒されました。以下、ネタバレ。
いきなり「待たせたな」から入るんだもん、ちょっとペンが走り過ぎじゃない?って思ったのはホントに最初だけでした。
榎本武揚というキャラクター自体が独特すぎる、という点は彼の簡単ながらドラマチックなプロフィール(Wikipediaより)を見て押さえてほしいです。本編ではカメオ出演で草なぎ剛が演じていたけれど、残念ながら軽過ぎたのは一目瞭然。
冒頭で大鳥を待たせて丹念にひげのお手入れをし、土方をして「兵士が戦ってるのに、ヨーロッパにいたころの習慣だからといい、昼間から部屋で菓子を食ってる男」と言わしめる男。どんなとんでもない人なのかと思うところ、気持ちよく裏切られました。
「新選組!」時代の江戸っ子なしゃべりといえば、野田秀樹が演じた勝海舟が忘れられませんが、榎本の江戸弁がとにかく小気味いい。愛之助さんは、上方歌舞伎の次代を担うと言われている人のひとりだそうで、大阪出身なのはちょっと皮肉です。
「君は嫌かもしれないが、私らは似ているのさ」
「あんた、死にたいんだろ。一日も早く戦(いくさ)でさ」
「とりあえず一杯飲んなよ。知らねえものは一度は試しておかねえと、了見を狭くするよ」
「勝手に近藤さんと重ねて、勝手にがっかりされたんじゃ、こっちはたまんねえな」
「間抜けなロマンチストさね」
などなど、印象に残る台詞、キリなし。思い出してみれば「古畑」の時代から歌舞伎役者さんにものすごくハマる意外なキャスティングをしてきた三谷さん。最初に「片岡愛之助」と聞いたときは不勉強だったので「ダレ?」状態だったのだけど、今回のは、本当にすごいです。
このボールを受け、投げ返す副長。「みんないなくなっちまった」というひとことがすべてを象徴していますが、残った土方(山本耕史)の仲間への想いもすべて凝縮したような90分。自分が心から愛して育てたプロジェクトに俳優としてはただ1人、もう一度携われるうれしさと責任、なんだか仕事をしている人間として羨ましかったです。
榎本と土方の息の詰まるような会話によってお互いが"感化"(c:勝海舟先生)され、生きてこれからの時代を見ていこうと考えを変えていき、そしてたどりついた先は…というながれが過不足なく収まっていて、時間が過ぎるのは、あっという間でした。
放送前の番宣では「3人でセット」の印象だったもう1人の大鳥圭介(吹越満)。私の中では、榎本の放った光が強過ぎて、影が薄くなってしまった。あとは、池田屋事件当時からいた、という設定の山野(鳥羽潤)と蟻通(山崎樹範)。地味過ぎw 鳥羽潤、NHKにお呼ばれすることは多いけど、華がないなぁ。
試衛館の食客たちを集めて再収録したシーンはファンサービスと「同窓会」を開きたかったんだろうなぁ、と感じました。もちろん、うれしかったんですけど。世界で最も強い生き物は何か。それは「鵺(ぬえ)」である、という提起。そしていちばんおそろしいのは人じゃないか、っていう山南さん(堺雅人)…。
強烈な存在感をのこした山南さんを意識して、土方に「山南総長は武士の中の武士だった。あの人がいなければ、いまの新選組はなかった」と言わせたり、自分が池田屋事件における山南さんのかわりになろう、と言う榎本に「無理だ」ってあっさり言うところ。そして最後に「鵺を人間が倒す」という台詞が涙腺を刺激してきます。
一方、午後放送された総集編を見て、総司を演じた藤原竜也の顔に時の流れを感じました。1年以上、実際は2年近くたっていると思われるので、山南さんをはじめほかの"大人"メンバーは囲炉裏を囲むとすっかり元の雰囲気なんだけど、若い総司だけ、ちょっと違うんだもの。無邪気な総司を演じているけど、あの頃の天真爛漫さはもう出せないのかもね。
意外でしたが佐藤B作の幕臣役、永井尚志(箱館奉行)がおいしいところをもっていってたのもよかった。外から新選組を見ていた人間として、新選組が人斬りの無頼の輩ではなかった、とフォローができて「近藤さんになんて詫びればいいんだ」と言う土方に「『ごめんなさい』でいいじゃないか。それで怒るような近藤さんじゃないだろう」、そして「よくやってくれた」って言える人がいた、というだけで、泣けちゃいました。
句集や浦賀で拾ったコルク栓などの懐かしい小物も再登場。総集編のラストシーンではおみつさん(沢口靖子)がコルク栓を2つとも持っています。市村がぶじにおみつさんに会えたんだ、っていうことを、総集編を思い出して確認できました。
土方は新選組の羽織のかたわれを鉢巻きにして近藤の元へ旅立っていったけど、近藤を思い出す前に榎本に詫びます。一方、降伏後に切腹するつもりだった榎本は生きて「ロマンチ」として北海道の開拓に携わり、東京農大を設立。新選組(近藤勇と土方歳三)の夢が現代まで形になって残っているのかも、って考えるだけでうれしくなりました。
DVDが出たら、買っちゃうな、たぶん。
【追記】見終わったのでムックと本などの関連エントリを書きました。コチラから。
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コメント
ままこっちさん、コメントありがとうございました。
「はぁ、お腹いっぱい。ことしは愛之助様に会うため歌舞伎デビューでもしようか」くらいだったのが、ままこっちさんのブログに漂着してからさらに「チーム箱館」が気になりだしました。古典「燃えよ剣」を読みました。大鳥圭介「美男子」って書いてありましたよ…。吹越さんとはイメージ違うなあ、といきなりつまづく私です。
>>内容の偏っている拙宅
いえいえ、ひとつの事柄にいろんな見方があって当然で、ままこっちさんのブログは、圧倒的多数の単なる「山本土方萌え、続編バンザイ」ではなかったので非常に興味深く拝読しました。またちょろちょろお邪魔させていただこうと思っていますのでよろしくお願いします。
TBが不調のようで申し訳ありません…。断続的にFC2ブログとライブドアブログからのTBがかかりにくくなっているようなので。
投稿: ruko | 2006/01/09 16:25
rukoさんこんにちは。このたびは弊ブログへのご訪問、コメント、TBありがとうございました。
私は正直、続編は「・・・」な感想だったのですが、史実スキー(特にチーム箱館)としては榎本釜次郎が非常にカッコよく、夢のある人物であったと描かれただけでも救われました。。
内容の偏っている拙宅ですが、よろしければまたお立ち寄り下さい♪
相互TBさせていただきます。
投稿: ままこっち | 2006/01/09 00:53
satesateさん、こんばんは。
このところある意味落ち着いた生活を送っていて何かにトキめくということがしばしなかったのですが、冒頭の「そのまま、そのまま」でもう心を射抜かれ、この番組は彼のモノだと思って90分走り続けましたw
歌舞伎ではとても有名な方ということがわかり、改めて自分の不明を恥じました。ああいうたたずまいは、なかなか普通の俳優さんでは出せないですよ。あんまり「三谷組」に行き過ぎず活躍の場を広げてほしいなぁ、なんて、ワガママでしょうか。
俄然、榎本武揚に興味がわいてきていろいろ調べています。「五稜郭」は一通りリサーチしてから機会があったら見たいです。里見浩太朗、愛之助さんとは全然違った意味で濃そう。
投稿: ruko | 2006/01/08 00:36
こんばんは、rukoさん。
今日、再放送で、ようやく見ました。
榎本さん、この人、だれだれ誰ェー!
と思いながら見ていたので
エンドクレジットが待ち遠しかったです。
私は、リアルタイムで、里見さんの
「五稜郭」見たので、
それとの違いを考えると、
細かいところで笑いのポイントを重ねる
榎本像が三谷さんらしかったです。
部屋で菓子食ってる人が、
標準語をやめたとたん、光ってくるって
いいなあ。
投稿: satesate | 2006/01/08 00:18
BROOKさん、コメントとTB感謝します。
会津編…。戦闘は酸鼻を極めましたし、どう三谷さんが料理をするのか見たいような怖いような。斉藤一と容保公ではドラマチックにならないので、今回の榎本&大鳥のように誰をプラスするかもだいじですね。
ただ「読者の要望に応えた」っていって視聴率10%切っちゃったみたいですから、どんなもんでしょうか(汗)。裏に「古畑」があって自分で自分の首締めたところもありますが、こういうドラマが受け入れられないという世の中っていうのも、少し寂しいです。
投稿: ruko | 2006/01/07 15:42
コメント&TB、ありがとうございます。
個人的には会津編も製作して欲しいと思っています。
三谷氏も書きたいと言っているんだとか。
再び熱烈な要望がたくさん上がることを信じています。
たしかに女性がほとんど出てこないドラマでしたが、
それはそれで、良かったと思いますね。
まさに硬派でした。
投稿: BROOK | 2006/01/07 11:47
ちょしさん、お忙しいのにコメントありがとうございます。
大河は子どもの頃からほとんど見ていますが、1回残さず集中して見たのは「新選組!」が久しぶりでした(振り返れば「独眼竜」とか「武田信玄」とかありますが)。終わったときの喪失感はちょしさんときっと一緒くらいだったと思います。
とやかく言われることが多いNHKの中に、信念を持って続編をつくるパワーをもった人たちがいたということにまず驚きました。不祥事に端を発した受信料不払い問題などがあり「視聴者のリクエストにお応えして」というポーズをとるのにもってこいの作品だったのではないか、などと邪推もします。けれど、そこには「続編をつくってください」と「声」を送ったたくさんのファンがいたことで、結果オーライだったのではないかと。
山南さんがいちばん好きで続いて総司、その次が土方の順でしたので、今回の続編にその山南さんの影が随所に出ていたのがうれしかったですね。試衛館のシーンでは「加藤清正じゃないのかよ!」ってまぜっかえす左之助と、山南さんと土方が険悪になってきて「この話はもうイイや」ってあわてて話を止めようとして「お前が始めたんだろ」って土方に止められる総司がよかったです。ぜったい永倉さんは裸で出てくると思ってましたw
ああいう場面が本編であってもおかしくなくて、かつきちんと後へ続く伏線になっていて。
特典映像満載のDVDに期待です。
投稿: ruko | 2006/01/07 10:02
rukoさん、おはようございます。
今回じっくりと『新選組!』ともう一度向き合ってレビューを書く時間が取れそうもないので、rukoさんのエントリーを読んで思いを馳せております。
1年間の大河が終った時は胸にポッカリ空洞が出来た気がしたものですが、ファンが熱望していた「土方その後」を撮ってくれたことにまず感謝!
私は山本土方がとにかく好きなので、それだけで大満足でしたが、愛之助榎本は思わぬ拾い物(失礼!)でした。あの江戸弁にはノックアウトされましたね。
ぐっさんはまた脱いでるし(笑)、短い挿入部分でしたが嬉しかった。
なーんて書き始めると長くなるのでこのへんで(だったら、レビュー書けよ、って感じですね^^;)。
投稿: ちょし | 2006/01/07 09:03
ukimiyaさん、おはこびありがとうございます。
ギャグは控えめにしたい、と三谷さんはおっしゃっていたようですが「かっこわるかったぜ」と大鳥のもみあげをいじる土方や「2人だけで心を通わせるのは、やめていただきたい」っていう榎本などなど緊張をほぐすいい感じになっていたと思います。
何より「最後まであきらめない」「夢を忘れない」の2点は、本当にありがたい応援になりました。
投稿: ruko | 2006/01/05 19:58
三田主水さん、お越しいただき恐縮です。
試衛館のシーンが撮りおろしだったことは年末の番宣や公式ブログで仕入れていた知識だったので(汗)予備知識なしに見て藤原竜也くんの大人になった印象をきちんとつかまえられたかどうかは微妙です。
大河49回の中では、なかなか心に残る台詞というのがいくつもは出てこないですが、三谷さんの気合いを見た気がしました。
DVD、出ますよね?まっさきに買いますね、現在の心境だと。
投稿: ruko | 2006/01/05 19:55
lovespoonさん、こんばんは。
「続編」をつくるとなると、本編を見ていなかった人には「なんのこっちゃ」となってしまうことになる場合が往々にしてあるのですが、これは本編を途中でギブしてしまった人にも、大河ドラマにあまり興味のない人にも、メッセージが伝わる作品に仕上がったのではないでしょうか。
そしてそのメッセージがお正月にふさわしい前向きなものであったことが、本当にうれしかった。
里見浩太朗さんの「五稜郭」は、あちこちのブログでも取り上げられていました。今回、榎本を演じた片岡さんも予習でご覧になったそうですw そのイメージでリハーサルに臨んだら「もっと普通にやって」と言われたとか。私はきょう安部公房の「榎本武揚」を買ってきました。ちょっと勉強です。
「新選組!」では、記憶にある限り中年男性が演じて来た近藤勇や土方歳三を若い香取慎吾や山本耕史が演じたこともまた話題でしたが、榎本は私の中ではこれから北海道の開拓や農業振興にも携わっていく働き盛りのダンディな片岡さんのイメージがずっとついてゆく気がします。
投稿: ruko | 2006/01/05 19:52
ruko様はじめまして。TBどうもありがとうございました。
できるだけ冷静に感想を書いたつもりだったのですが、後で読み返してみて、ruko様の感想と読み比べてみると、まだまだ見落としていた点も多かったなあと思ってしまいました。
(試衛館の食事シーンはずっと過去のものの編集と思いこんでいました)
僕もDVDが出たら買ってしまうなあ…と思っている次第です。
投稿: 三田主水 | 2006/01/05 17:09
はじめまして、TBありがとうございます。
このドラマ本当におもしろかったですよね。
随所にギャグもあり、場面場面にドキッとさせられるシーンもあり…。
そして、想いが榎本武揚や箱館で生き残った隊士に引き継がれたエンディング、というのは本当よかったですよね。
投稿: ukimiya | 2006/01/05 10:49
rukoさん、TBありがとうございます。
内容の濃い90分でしたね。最後の1日にスポットを当て、回想を交えての台詞劇…三谷さんならではの作品といった感じでしょうか。勿論1年かけた大河があっての回想ですが、こんな作り方もあるのかと改めて感心させられました。
片岡さんが私も強烈に印象に残りました。またこうした時代物で是非拝見したいものです。
榎本武揚に関してはちょっと昔の作品で里見浩太郎さん主演の『五稜郭』ってのが多分レンタルでもあると思いますので良かったらご覧になって下さいませ。今回の二人の会話のバックが見えてくると思いますですよ。
羽織の鉢巻のシーンの歳さんが凛々しうございましたわ♪
投稿: lovespoon | 2006/01/05 10:13
l-3-lchuさん、訪問どうもありがとうございます。
90分という限定された時間の中で描いていくには回想シーンもあの分量が限度だったと思いますが、よかったですね。山南さんが「人は人を欺く」という台詞があり、山南さんを死に追いやってしまった土方が最後に「鵺を人間が倒す」と言ったこと。ただ、これは人を欺いた人、という意味ではないところがポイントで。
改めてあの試衛館時代に戻っていたら、土方はもっと山南さんと話して、ベターな関係を築くことができたのでしょうか。まだまだ脳みそのなかでいろいろ考えられそうです。ホント、三谷さんに感謝しなくては。
投稿: ruko | 2006/01/04 23:25
はじめまして、l-3-lchuと申します。
トラックバックとコメントありがとうございました。
私も山南さんが一押しだったこともあり、今回の続編に散りばめられていた、土方さんからの想いに涙が止まらなかったです。
そして、できることならここに戻りたいなあと、回想シーンを見ながら思ってしまいました。
本当に、三谷さんには感謝です。
投稿: l-3-lchu | 2006/01/04 21:38
Rangeさん、お寄りいただき恐縮です。
「新選組」に関しては大河が始まる前から思い入れのあるファンも多く、また、大河で新たにファンを獲得した独特の世界でもありますよね。大河の第1回放送、近藤が坂本龍馬(江口洋介)と相撲をとったり一緒に浦賀に出かけたりするのが「ありえない」と一部のファンが激烈に怒っていたのが印象的で。
このため「新選組!」を見るにあたり、私はあまり突きつめて「史実」を追い求めずに三谷さんの視点を大事に見てきたつもりです。そんなこともあって、私は今回のドラマをものすごく楽しめてしまいました。榎本が生き抜いた原動力の一部が土方歳三と新選組との最後の会話にあったのかもしれない、って思うだけでワクワクです。そんな「お年玉」をくれた三谷さんに感謝したいと思っています。
投稿: ruko | 2006/01/04 17:44
はじめまして。
TBありがとうございました。
榎本武揚あの後生き続けたんですね。
土方の生きてくれって去り際のセリフが生きてきます。
「新撰組!」は史実と脚色のブレンド具合が見事ですね。
投稿: Range | 2006/01/04 13:00
leinetsuさん、お運びくださりありがとうございます。
私はハイビジョンで録画したものを一足先に鑑賞したので、今日の午後放送された総集編とシンクロさせながら見ていました。それだけに、本編で心ならずも去っていった者たちよりも、「歳三の最期の日」に深くかかわった榎本の台詞の数々(喋った片岡さんの力量もかなり影響していますが)に心を打たれまして。
あるいは土方は山南さんと榎本としたように「膝をつめて話せば」別の新選組の形もあったのではないか、などなどいま余韻を楽しんでいるところです。
投稿: ruko | 2006/01/04 01:07
初めまして。
素晴らしいTBのお礼に参上しました。
rukoさんはダイバーなだけあって、体力がありますね。
体力は、そのまま集中力になります。
俺なんかはお祭り気分で、「ホメ殺すぞ~」と記事を書いていたのに比べ、rukoさんの記事は落ち着いています。マイナス面も、フェアーに書いてる。ディテールの細かさも、かなりのものです。
こちらこそ、また、遊びに来させて頂きますね。
投稿: leinetsu | 2006/01/04 00:39