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2006/02/26

二・二六事件から70年

「二・二六事件」。陸軍の青年将校が中心になってクーデターを起こそうとし、首相官邸などを制圧したものの失敗に終わった1936年の事件からきょうでちょうど70年です。大学生の頃、何がきっかけだったのか覚えていないのですが一時期、この事件について猛烈に本を読みまくった時期がありました。関連の本は何冊か後段で紹介しますが、まずはコレから。

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松本 清張

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私がもっているのは、表紙に握手している手が描かれていて、それがどんどん巻が進むにつれてキモチ悪くなっていく文春文庫版…。新装版、出てよかった。現代の、どこか不安で不穏な空気に懸念を抱いている方は一度読んでみてほしい本です。

いま、松本清張原作ドラマ「けものみち」が話題ですが、この本では昭和初期の不安な世相と、それを背景に起こった数々の複雑怪奇な事件を丁寧に追っています。ノンフィクションでももちろん、圧倒的な筆力。本のボリュームの約半分は「二・二六事件」について書いてて、それはそれで猛烈におもしろいんだけど、むしろ読んでほしいのは前半のイヤな事件の数々。

このブログではこれまで触れてきませんでしたが、ライブドア事件と、それに関連して沖縄で亡くなった野口英昭氏に関する動きや報道、ブログを見ていると松本清張が書いていた昭和初期の事件からも似たようなニオイを感じるんです…。本を読むと、世の中は急に変わるわけじゃなくてちょっとずつちょっとずつおかしくなっていって、ある点で沸騰するということがわかって、いま時代は確実にそういう方向に向かってると感じてるので、震撼してしまうのでした。

二・ニ六事件に関するその他の本やDVDは、こちらから。

本当は一番読んでほしかったのは澤地久枝さんの「妻たちの二・二六事件」(中公文庫)なのですが、絶版になっちゃったようで、Amazon.co.jpではマーケットプレイスでしか手に入らないみたい。これも時代と70年の時の流れなのですねぇ。

二・二六事件では10名を越える軍人や民間人が死刑になりました。沢地さんはその妻たちに焦点を当て、事件の前後の青年将校たちの心情や行動を掘り起こしています。また「逆賊」として死刑になったため、その後長い間、家族たちは世間から白眼視され、苦労を重ねます。太平洋戦争を挟み、さまざまな生き方をしていった「妻たち」の軌跡は今読んでも胸に迫ります。

澤地さんはこの本をきっかけに、太平洋戦争の分水嶺となった「ミッドウェー海戦」で亡くなった日米の男性の家族へのインタビューで構成した滄海(うみ)よ眠れ-ミッドウェー海戦の生と死など、「聞き取り」を核にしたノンフィクションをたくさん書かれている方です。こちらもぜひ読んでほしいところ。

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事件そのものの描き方には個人的にはどうかと思っています。また、いろんなネタを突っ込み過ぎているのでちょっとしんどいのですが、昭和が戦争へなだれ込んでいく時代を描いた篠田正浩監督の大作。

蒲生邸事件蒲生邸事件
宮部 みゆき

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この際、当時の空気感みたいなものを「エンターテインメント」として読むなら。現代の社会に生きる高校生が「その日」にタイムスリップしてしまうというお話。タイムスリップってやっぱりどこか無理があるので、そういうところに目をつぶれるかどうか、っていうところが楽しめるかどうかの分かれ道だと思いますが、宮部さんの本なのでグイグイ読めることは間違いなしです。

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二・二六事件は陸軍の青年将校が中心になって起こした事件。その「主力」となった陸軍の歩兵第一師団は六本木にあって、私が学生時代に本を読んでいたころは、防衛庁として当時の建物がそのまま使われていました。ゲートの中を見ると、陸軍の星のマークが建物に刻印されているのが見えたものです。

そんな防衛庁跡地はデベロッパに売り払われて東京ミッドタウンというなんともしらじらしい名前で再開発が進んでいて、当時の面影は失われてしまいました。オープンするとかつて六本木ヒルズが、いまは表参道ヒルズがそうだったように、どっと人が押し寄せるのでしょうね。

日本の、こうやって歴史が街並みと一緒に「リセット」されていくのがなんとも居心地が悪いです。もちろん幕末の江戸が今も東京だったら困るし、地震や戦災などもあったと思いますが「街の記憶」がない、って寂しい。

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コメント

guminomi2さん、こんばんは。

かなり引き返せないところまできちゃっていると、私も思っています。景気は回復していると言いますが、毎日通勤で見る多摩川の土手には10年前には少なかったブルーシートでつくった家がびっしり。昨日久しぶりに会った学生時代の友人に聞いた公立小学校のお寒い現状などなど、誰も望んでそうしているわけではないはずなのにそこにあるギスギスとしたリアリティは、なんなのでしょう。

私が唯一できることは選挙権を行使することと、たまに、ごくたまにですがこうやってブログで書くことくらいしかないのだろうかと「勇気」以前の場所でやり切れなさを感じています。

投稿: ruko | 2006/02/26 20:44

そうでしたね。
私も世の中の流れは、気がついたときは、もう引き返すことの出来ないところへ、きてしまって、庶民にはどうすることも出来ないのではないんだろうかという不安はかなりまえから、感じています。そのわりには何もしていない自分に忸怩たる思いを持っています。結局のところ
勇気がないんですね。思うだけでなにもしないのは、流れているだけなんですね。思っても何も出来ない時代にはしたくないという気持ちは
強いんですが。もうすでにそうかもしれませんが、知らないだけで。

投稿: guminomi2 | 2006/02/26 11:57

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