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2006/02/25

拍子抜け 氷壁〈最終回〉

前回終わったあたりから嫌な予感がしていたのですが、K2(実際はNZ)でのクライミングのシーンはド迫力ながら、カラビナに瑕疵があったかどうかも含めて、人間ドラマとしては比較的ありきたりに終わってしまい、なんだか残念でした。「原案」として井上靖の小説をきちんと挙げた(簡単にパクらなかった)という点は評価しますがまったくの別モノでした。時間のある方は井上バージョンを読むことをお勧めします。今から半世紀前の東京の空気や男女の息づかいが聞こえてきそうです。

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井上 靖

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一歩踏み出す決断が大きかったわりに奥寺(玉木宏)と美那子(鶴田真由)が下した結論って案外フツーでしたね。以下「原案」についてもネタバレで短めにレビューしてます。

ラスト、奥寺はK2をソロで登攀していきます。のぼってゆくところで終わってしまうので成功したか失敗したかも、視聴者にゆだねられた形。原案では、主人公はゆかりに当たる人物が待つ場所へ登っていく途中で落石に遭い、動けなくなって死んでゆく自分を刻々と手記に残して終わります。

なので、まぁ奥寺が死ぬ、という形で終わらなかったことは、救いだったかも。

ただ、最終回目前の番宣で「これは男の友情を描いたドラマです」って強調していましたが、それを表現するのに、奥寺が北沢(山本太郎)の幻を見る必然性はちょっと飛躍し過ぎと感じたし「クライマーは女を愛したらおしまい」っていう決めつけ方も、どうなのかとw

智之ボン(武田真治)の唐突にしか見えなかった心変わりも、ご都合主義に感じてしまった。「山を途中から登っていた」と説明していましたがその割に冷徹で、無理をしている感じが途中ではまったくなかったせいかな。

八代社長(石坂浩二)は最後になって優しさが出てきました。リビングで聴いていたクラシックが、他者をよせつけない荘重な音楽から暗い音楽になり、ラスト、帰ってきた美那子を迎えるときに軽やかな音楽に変わっていったのが印象的。通人の石坂さんは、ご自分で選曲してらしたかもしれないですね。

美那子。ネイルに託した夢は、わかった。ただ、結局 夫→北沢→奥寺→夫 と揺らいだ自分の気持ち、本当に解決あれでできたのかは、同じ女性としては疑問が残ります。

カラビナの結論は、私は山のことは解らないのでよかったとも悪かったとも言えないのですが後味の悪さが残りました。ああいう決断というのは、あり得ることなのかと。

「そうきたかぁ」。最後まで南部社長(伊武雅刀)、おいしいとこもっていきました!あとは室井さん(相島一之)、いい人でよかったです。ドラマでは週刊誌や新聞・テレビの記者が「いい人間」として描かれることが皆無なので、苦しくても信念を通した室井さんに拍手、ってことで。

〈これまでのレビュー〉
どうしたいの 氷壁〈第5回〉
ズバリ言うわよ 氷壁〈第4回〉
追いつめられる 氷壁〈第3回〉
山の迫力 氷壁〈第2回〉
お金かかってる…氷壁〈第1回〉

【追記】TBさせていただきました。

氷壁 山男の伝説 (ALBEDO 0.073

土曜ドラマ「氷壁」#6 〜明らかになる真実。そして。 (ままこっちの何気ない日常

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コメント

pixy_japanさん、先ほどは失礼いたしました。

私もpixy_japanさんのエントリには共感するところも多いのですが、前にそちらにお邪魔した際にコメントしたとおり、ご使用の画像について管理人的にはNGと判断せざるを得ないため、TBはお断りさせていただきました。

もし今後似たようなケースがありましたらコメントのみ残していただければ幸いです…。pixy_japanさんのブログはブックマークしてありますので、時折拝見しておりますし。

投稿: ruko | 2006/03/08 00:59

何度も申し訳なかったです。
 記事読んで共感する部分もあったので思わず.......お手数かけて申し訳ありませんでした。

 原作ファン、穂高・上高地を好きな人にとっては、どういう切り口で現代版にするのか?と思っていましたが、(穂高・上高地を出さないのは納得するとしても)物語の締め方としては、自分は納得できませんでした。
 主人公やヒロインがあまりにも幼稚で、周りの人間の方が、考え方も行動もしっかりしていて、共感はそっちにいっちゃったのが原因かなぁ。八代哲夫が一番好きなキャラになりました。

投稿: pixy_japan | 2006/03/08 00:23

七兵衛さん、こんにちは。

ご指摘の通りで、散りばめられていた問題点がすべて「愛」でオブラートに包まれてしまった印象があり残念でした。

山に登ること、その意味を七兵衛さんのエントリで補足しながらドラマを見られた後半でした。ありがとうございました。

また遊びに行きますね。

投稿: ruko | 2006/03/01 11:12

rukoさん。
TB&コメント、ありがとうございます。
楽しみにしていただいて、大変光栄です!

演出とリアリティーの折り合いをどう付けるか、
というのは難しいんだろうなと思います。
でも、リアリティーのなさが気にならないような骨太の構成やテーマ性があるのが、いいドラマや舞台なんでしょうね。

NHK版「氷壁」の場合、例えば企業に対する責任追及といった社会性や、
極限での男の友情というドラマが、
なし崩し的に進んだ愛憎劇で、かすんでしまったような気がしてなりません。

何はともあれ、また激しく突っ込み甲斐のあるドラマが出てくることを楽しみにしましょう?!

投稿: 七兵衛 | 2006/03/01 03:30

ままこっちさん、こんばんは。

玉木さんが一回り成長するためにあったようなドラマだったかもしれないですね。若手の俳優さんは民放のドラマメーンでお仕事していると「旬」を過ぎると一気に陳腐化してしまうことが多いので、NHKでいい役をコンスタントに貰えるようになっとくというのは意外と大切だと感じます。

一方で「土曜ドラマ」のブランドに製作陣がこだわりすぎていないか、ちょっと心配になってきました。次回作もかなり重めの内容で、真摯につくっていますという姿勢はいいですが、週末の夜にじっくり見るドラマとして、視聴者に受け入れられるかどうかボーダーラインのような気がします。そういう意味で、私は次回は、パスかも。

投稿: ruko | 2006/02/28 23:45

lovespoonさん、こんばんは。

奥寺さん、遭難せずK2登頂に成功したんでしょうか。金銭面からもまさに奇跡のクライマーですね!

>>八代社長の大人さ加減が最終回に来て急に軽くなってしまった他のキャラ
確かに。このあたりは石坂浩二さん面目躍如というところでしょう。無理して金田一耕助演じずに本物の「大人」を演じてくださればいいのに。市川監督のお誘いは断れない、ということなのでしょうか(汗)。

山か女かの二者択一は、受け止め方がいろいろあるようで、私がめぐってるブログの中では男性の方が異論を唱えられたりしてましてなかなかおもしろかったです。

山岳ドラマや海洋ドラマはお金がかかりますがその分見応えもありますよね。次回作以降も、スケールの大きなドラマを見たいと思ってます。

投稿: ruko | 2006/02/28 23:35

rukoさんこんにちは。週末スキーで留守にしていて、今日ようやく録画でキッチリ見ました。
いやあー詰め込みすぎ、な感じでした。起承転結、の転後半+結が一気に来た感じで。もう少し後半のペース配分がバランス良ければ、また異なる感想かなあ、と。北沢と奥寺の友情にはグッと来ました。
役者陣の演技は良かったです。玉木君、新境地を開いたのでは?脚本の練度は、やっぱりクライマーズハイ、でしたね・・・
TBさせていただきました。土曜ドラマは次回作も見ます!

投稿: ままこっち | 2006/02/28 01:40

rukoさん、こんばんは。
終ってしまいましたね。奥寺君が遭難せずに済んで良かったです。

八代社長の大人さ加減が最終回に来て急に軽くなってしまった他のキャラとのバランスをとってくれた様でほっとしましたわ。北澤母の存在も良かったですね。

「クライマーは女を愛したらおしまい」っていうのは山男共通の感覚なのかも知れませんね。
新田さんのを読んでてもこの感覚は何度も出てきて主人公は常に家庭と山の二者択一を迫られてるような気がします。
家庭を持ってしまうと守りに入って山には登れなくなるということなんでしょうね。

投稿: lovespoon | 2006/02/28 00:28

Lady-eさん、こんばんは。

いつもTBしてくださる仙丈さんがブログの中で「やはり奧寺はこのあと華々しく散つたのだらうな」って書いてあってもう超受けました。

ことばは違うが「奥寺、逝ってよし」、と。

本当におっしゃるとおりで4回5回、そして最終回の前半までの「下ネタ」(by室井)部分を変に強調し過ぎでしたね。

私としては「クライマーズ・ハイ」が強烈によかったので、ちょっと期待をし過ぎてしまったかもしれないと少し反省している次第です。

投稿: ruko | 2006/02/26 20:51

こんにちわー
またしてもTB打てなかったみたいなので
0.39の方から打たせて頂きました~

ちょっとさあ~
どうでもいい、4話5話に力注ぎすぎって
感じでしたよねぇ(^^;
書いてもいいけど
書くなら、それこそそっちはもっとあっさりと
流して流して~って感じにして

最後どーんと重たくいって欲しかった(^^;
ずっしりと・・・。

最後軽すぎて悲しいぞぉ(TT
氷壁マニア化した私にとっては
非常に寂しいぞぉ(TT

最終回は期待したのにさ><

投稿: Lady-e | 2006/02/26 15:34

くうさん、初めまして。コメント・TBありがとうございました。

私は大々的な番宣に影響されて早速原作を読んでしまい、そのギャップに最後まで苦しんでしまいました。メロドラマとしてもちょと微妙…な感じで、力抜けてしまいました。

さっそくおじゃまさせていただきます。

投稿: ruko | 2006/02/26 02:29

初めまして。
私は原作も読まず、ただ「山と男の友情」を描いた物と
信じて見始めたので、途中からの思わぬメロドラマぶりにビックリでした。
ぜひ原作も読んでみようと思います。
トラバ、よろしくお願い致します。

投稿: くう | 2006/02/26 00:56

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