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2006/06/14

ナイロビの蜂 The Constant Gardener

〈2005年 英製作 128分 おすすめ度★★★★★〉
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大好きな目ヂカラ女優さんのひとり、レイチェル・ワイズがアカデミー助演女優賞を獲得した作品。予告編などをあまり観ていなかったのですが予想していたよりもずっと美しいけれど残酷で、豊かな国でのほほんとした生活を享受している自分の無力さをヒリヒリと感じる1本でした。

ナイロビの蜂〈上〉ナイロビの蜂〈上〉
ジョン ル・カレ John Le Carr´e 加賀山 卓朗

集英社 2003-12
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おすすめ平均

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「ナイロビの蜂」公式サイト(音楽onなのでご注意)

ジョン・ル・カレの本って実はまだ1冊も読んでいないのですが、とり急ぎ原作から読んでみることにしました。パンフやポスターのつくりなどはラブロマンス色を全面に出しちゃっていたのが若干不思議。予想していなかったらしい展開に隣に座っていた方はビビりまくっていました。富めるヨーロッパ、貧しさにあえぐアフリカを深く切り取っています。監督は「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレスです。以下、ちょっとネタバレ。

「ラブロマンス色」について"不思議"と書いたけど、大きく言えば夫(レイフ・ファインズ)と妻(レイチェル・ワイズ)の物語ではあります。けれど映画の冒頭で妻は殺されてしまい、その死の謎を追わざるを得なくなった夫のフラッシュバックの中で存在していきます。

レイチェル・ワイズが、エキセントリックな「運動家」でありながら自分とは対極にある内気な外交官の夫を愛し、けれど信念の進むまま生き急ぐ女性テッサを好演してます。フラッシュバックの彼女の印象が強いので、その足跡を追う形の夫、ジャスティンが冒頭から考えると信じられないほど「強く」なって作品が終わり、ラストに本当に2人が「お互いのもの」になったことを感じられるのでは、と。

アメリカの娯楽大作と違い、「パーフェクト勧善懲悪」ではなく不条理のなかで物語は終わります。そして私のなかでは疑惑の治療薬を開発し、スーダンの難民キャンプで病人を治療する医師ロービアーの問いかけが棘のように残るのでした。

原作のジョン・ル・カレは「スパイ」「諜報」のイメージがありますがとくに後半、それが遺憾なく発揮されているのにも驚きでした。9.11のあとイギリス国内に大量に設置された監視カメラ。テロリストを監視するのにも使われているでしょうが国益に反すると判断された自国民を執拗に追うようにも感じられる街頭や駅などに設置されたカメラの数々。

外交官でありながら「パスポートが偽造かもしれない」のひとことでIDを取り上げられ、偽造パスポートを駆使して舞台はケニアからロンドン、ベルリン、再びケニアそしてスーダンと移り変わっていきます。

一方、アフリカの雄大で大きな自然とケニアの首都ナイロビのスラム街「キベラ」の貧しさ、そしてスーダンで自動小銃に追い立てられる難民たちと、胸をえぐられるような場面が次々に出てきました。

パンフレットを読むと「シティ・オブ・ゴッド」でブラジルの貧困を鮮烈に描いた監督が、キベラの貧しさに驚いたそうです。また、鍵となってくる製薬会社がアフリカで行っている、とされた治験についても、ブラジルでもエイズ治療薬などで製薬会社の問題が気になっていたためメガホンを取ることにした、とのこと。

緊迫した映画のなかで登場は若干唐突ではありましたが、テッサの兄のハムとそのgeekyな息子が緊張を和らげる役割を果たしていて、少し和むことができました。ケニアでテッサが調べていた資料はすべて押収されてしまうのに、データがサーバに保存されていて手がかりをつかむことが出来たり、NGOの関係者とネット経由でテレビ会議風に喋って情報収集する姿などがとても「今様」でもあり。もちろん携帯電話はケニアでも活躍します…あまりいい使われ方はしていなかったけれど。

もう上映がほとんどの映画館で終わってしまっていますが、滑り込みセーフ、大きなスクリーンで観てよかったと思いました。テレビの画面で観たらきっとここまでいろいろ考えなかったかもしれません。

映画の撮影にはWFPが全面協力しているそうです。

国連世界食糧計画(日本語)

UNマークのついた飛行機からWFPの刻印のある食べものが地上へと撒かれる光景、しばらく忘れられそうにありません。

いろいろ考え過ぎ、まとまりません……。まだ近所の映画館でやっていたらぜひ観ていただきたいです。

イギリスの映画制作は宝くじの収益金でまかなわれているらしいと知ったのもビックリでした。

【追記】ジャスティンの旅と祖国イギリス、特にロンドンについてtravel雑記帳に追記しておきました。

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コメント

icewine5さんこんばんは。

前も書いたような気がしますが我々(同世代ですよねたぶん…汗)の学生時代はこういう「秀作」と呼ばれるものはいわゆる名画座で必ずかなり後まで観ることができたものですが、シネコンの利益再優先時代にあってはそうこうするうちにDVDが出ちゃうということになりそうな…。なんだかこれまた世知辛い世の中ですよね。

さて、陰謀の軸は製薬会社の治験なんです。Amazonでポチッとしたので、早く原作を読みたいところです。都合があったらぜひ。ぶっちゃけ、隅田の清五郎みてる場合じゃないっす。

投稿: ruko | 2006/06/15 20:40

rukoさん、こんばんは。

ナイロビの蜂、私も見に行こうと思いつつ、時間が~

なんとか残り少ないチャンスを狙って映画館で見たいので、「ネタバレ」部分は極力読まないように(笑)と思ったのですが、結局全部、読ませて頂きました。

「ネタバレ」部分から察するに、単なる恋愛ものではなく、裏に政治&経済&NPO/NGO等が複雑に絡んだ泥沼ストーリーのようで、とっても惹かれます。

製薬会社の治験問題も絡んでいるようで、それもどんな具合に描かれているのかちょと気になります。

投稿: icewine5 | 2006/06/15 00:01

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